彼と夫が会ったことで。

ふたりの関係を知る由もない夫に彼を会わせたことで、

正直なところ夫に対して思う心境は何も変わらなかった。

ひどい妻だと思う。

そんな無慈悲な私を彼はどう思うだろう。

彼は、

彼は私の夫に会ったことで、

何か心の奥底で変わってはいやしないか。

もし、何か心境の変化が生じたとしたら。

彼にまだ見えてない心境があるかもしれない。

もしかして、私にも。

だとしても、それがふたりにとって、

これから見る夢の続きがより素敵なものになるように。

今はただそう祈るだけ。

次にふたりで会うとき、

彼と夫が顔見知りになってから初めてになる。

お互いにどんな心境になるのだろう。

彼と夫と私と

少し遅れてきた彼に夫を紹介する。

「高校の時の友達で、仕事でもお世話になってる〇〇君。」

「写真見せてもらったことありますよ。」

夫の反応はいい。

「写真見たんですかー。ははは」

夫がいても、彼の声に心がキュンとなる。

彼も夫もににこやかに挨拶してる。

私を挟んで左側に彼が座り、

右側に夫が座る。

この不思議な感じ、現実なんだろうか。

彼の彼女というフワフワした気持ちと、

夫の妻であるという落ち着いた気持ち。

その気持ちが始終交差し続ける。

もしかしたら、

彼との今までの情事は、私の妄想で、

本当に夢の中の出来事だったかのような不思議な感じにおおわれる。

糸がほどけて何ヶ月も前から預かっていた、

私とお揃いの彼のブレスレット。

修理して彼に渡すも、同じものを私が持っていることを夫は知ってる。

だから、袋に入れて、

「直して来ました。」と夫の前で渡す。

「ありがとうございます。」

わざわざ今日じゃなくてもと思うけど、

彼に、夫の前で渡す理由。

彼は気づいているだろうか。

夫がいても彼を想っているという、私の想い。

こうして彼と夫の初めての対面が終わった。

彼の気持ちが心配だった。

彼はどんな風に感じているのだろう。

できることなら、夫を帰し、

彼に寄り添いたかった。

そんな感情だけを置き去りにして、

夫とふたり帰路についた。

彼の知り合いになった夫。

いつかふたりで飲みに行っちゃったりするのかな。

昂まる緊張

彼の緊張がLINEの文字から伝わってくる。

彼もまた緊張の面持ちであろう。

彼は初めて、

夫婦でいる私を見る。

誰かの奥さんだという現実を目撃する。

その想い、逆のパターンは私には想像を絶する。

彼は夫にはやきもちはやかないという。

でも、私はちがうから。

そこは、まだ割り切れていない部分でもある。

でも、それで自分の想いを測っているところもある。

私がやきもちをやかなくなったら…。

それは今はやめておこう。

やきもちはやかないという彼とはいえ、

それでも、私は彼と夫の間で、

彼の気持ちを考えてしまうのだと思う。

10年も夫婦をしていれば、

夫婦間に流れる独特の空気がある。

人前でベタベタすることは無いにしろ。

今は、夫に彼をあわせることよりも、

夫に彼との関係がバレないかと心配することよりも、

彼がどんな気持ちになるかということが、

それが一番の気がかり。

ただ、はっきりしてるのは、

私が二人を見比べることは無いということ。

それだけは、はっきりわかってる。

彼は…夫は…

今日のことを頭の中で何度も何度もシミュレーション。

夫に彼を紹介するときのこととか。

夫は彼の存在を知っている。

もちろん、ふたりの今の関係は知らない。

夫は私に尽くしてくれているし、

夫婦仲もいい。

私の中で、はっきりと、

夫は夫、彼は彼の形が出来上がってる。

夫がこうだから彼に…というものもない。

まずは、今日が滞りなく終われることを願う。

しっかり、私!

彼と夫が会う時

いつかとは思ってはいたけど、

いよいよ、明日、彼と私の夫が顔を合わす。

ここ数ヶ月の間、

彼と私と第三者で会う事が多かったし、

そういうシチュエーションにも慣れた。

彼と私の関係を知っている彼の友人を交えて会って、

友人の前でも、ごくごく普通に話したりもした。

そしていよいよ、明日。

いずれそうなる事は、覚悟してた。

大丈夫。他の人たちもいるし。

すごく緊張するけど、

何事もないかのように、

みんなの前でできたように、

ごく普通に夫を皆に紹介して、

彼のことは、他の人と同様に紹介すればいい。

それにしても、変な感じ。

怖い

あの時のことを思い出すと

体がこわばる。

彼とのことを周知させてしまったと思った瞬間の恐怖。

怖かった。

彼の守ってきたものを

一気に崩し壊してしまったと、

取り返しのつかないことをしてしまったと。

怖かった。

とんでもないことをしたと、

ただ怖かった。

結局、それは私の思い違いだった。

そして、今、その恐怖は、

もっと違う事だったと気がついた。

彼とのことが誰かに知られること以上に、

彼を失うのが怖かった。

一緒にいることだけを考えてた。

失うなんて考えもしなかった。

考えないようにしていた。

ずっとふたりで歩き続けることだけ考えていた。

それが一気に崩れ去り、

一気に恐怖心に変わっていた。

そしてその恐怖心だけが、

まだ心の奥で燻っている。

不安がっている私のために、

明日彼が時間を作ってくれた。

会えばきっと落ち着く。

反省

彼が常に落ち着いた気持ちでいられるように、

彼がいつもゆったりとしていられるように、

彼がまっすぐ前に進んで行けるように、

私がいるのだと、

そうしていたいと思うのに。

彼の心を乱すのはいつも私。

私の心が暴走し、

彼がそれを制止しようとする。

それでも私は彼の前から消える

そして、彼が沈んでしまう。

会いたい時に会えない。

抱きしめて欲しい時に会えない。

それが私たちの関係なのに、

それを望んでしまうこともある。

揺れ動くのはいつも私。

彼に迷惑かけたくないと、

私が勝手に1人であきらめようと思ってしまう。

物事を深く考えすぎて、

まだ起きてない最悪の事態を避けようとする。

彼の言葉にハッとして、

引き戻されて、

彼の言葉を読み返す。

昨日まで入ってこなかった言葉なのに、

今は心の奥に染み渡る。

常に彼は私に一生懸命なのに、

それさえも見えなくなっているのは私。

彼はいつもそこにいる。

見失ってるのは私。

動揺すると、かえって思いもよらない結果を引き起こす。

それを心にとどめておかなければ。

そんな時、かけてくれる彼の言葉を

真摯に受け止めれば、

きっとこんな辛い気持ちになることはないのだ。

今はただ反省してるよ。

あなたはまだそこにいる?

やめようか

失敗したことで酷く落ち込んでる。

彼との事を周知させてしまったと、

勝手に1人で思い込んで。

自分を追い詰めて追い詰めて、

彼との事も諦めないといけないと、勝手に思ってしまって。

私の姿を見て、彼も落ち込んで。

やめようかって言葉が出る。

結局私の勘違いで、

だれも2人のことなんて知る由もないのに。

なんで、私はこんなに弱いのかな。

どうして、ふたりでいるのに強くなれないのかな。

あんなに幸せな時間を過ごしたばかりなのに。

前にはゆっくりと進めるのに、

落ち込んでいく速度は、なんでこんなに速いのかな。

そんな私を止めようと、彼が言葉をかけてくれても、

私の中に入ってこなくて。

そしてどんどん沈んでしまう。

辛い気持ちをわかってくれないと思ってしまい、

ただ、それだけで受け止められない。

ほんとうは、ちゃんと分かってくれて言葉をかけてくれてるのに。

幸せのヒートアップ。

でも、それはちゃんとヒートダウンしないと、

また足をすくわれる。

何度経験しても、それを繰り返す。

飛ばしすきないようにね、と彼。

そうだよね。

何かあった時、まるで一人ぼっちかのように落ち込むのをやめなくちゃ。

1人で思い悩むのやめなくちゃ。

お願いだから、

どんな事があっても、

わたしを離さないで。

しっかり抱きしめていて。

手ブラ

9時間のデイユース。

彼とふたりきりで長い間過ごすのは1ヶ月半ぶり。

そして身体を重ねるのも。

彼とのんびり過ごしつつも、

あっという間に時間が過ぎていく。

時々「バイアグラでものんでみる?」

なんて笑って話していた彼。

思うようにならないと言っていた。

だけど、そんな必要はないと思うし、

彼は十分に私の事を癒してくれてる。

ただ、肌を合わせているだけで幸せで。

でも、

この日は、いつもと違う事態が起こっていた。

カレは始終元気で、

果てる前に苦しくなってしまい、

ちょっと休憩しては、

またムクムクと………。

その繰り返しで、

私の方が限界を迎えて。

それでも、彼に触れられると、

また快楽の中に引き戻される。

そんな薬を飲んでいないのは知ってるし、

飲んだ人の話と比べると、

彼の状態は違うもの。

何時間も彼の汗を浴び、

私は全身彼の汗に塗れる。

彼の胸で少し眠り、

そして、また………。

もし宿泊でもしたら、

このまま朝まで、ってなるんだろうね。

もっと会いたいけど、

そんなに会えないからこそ、

お互い求め合うのだろう。

帰り際、彼にねだって、

「手ブラ」の写真を撮った。

乳がんの手術で、さらに小ぶりになった胸。

本当なら彼の手にスっぼり収まってしまう。

寄せて上げて、傷は見えないように。

この画像を見ただけでは、

乳がんだなんてわからないだろう。

画像はこのブログのメディアに残し、元の画像は削除した。

それでいい……。