ヨコハマ

彼を何時間も拘束したかのような逢瀬の後は、

恒例になったかのごとく、

思いもよらない波にのみこまれる。

その都度彼を見失いそうになって、

彼が差し伸べる手に必死にしがみつき、

息を吹き返したかのように我に返る。

その逢瀬の話が、まだ中途半端だった。

この1ヶ月半、

彼に会うことはあっても、ふたりきりで会う時間が持てずにいた。

心の中でふたりきりになれないもどかしさに

半泣き状態の私を知ってか知らずか、

彼は有休を取ってくれた。

朝一で私に用事があったこともあり、

待ち合わせ場所、どこで過ごすか、

彼とLINEでのやり取りが続く。

ふたりきりでゆっくり過ごしたいという思いは同じで、

以前行ったことのあるホテルをおさえることにした。

彼との待ち合わせ、

「こんなとこで会うなんて奇遇だね」

なんて、冗談を言いつつ、少し歩く。

時々、彼の袖口をつまんでみたり、

腕に絡まってみたり。

お昼ご飯を調達して、少し歩いてからホテルに向かった。

部屋に入ったら、すぐに抱きつこうって思うのはいつものこと。

実際は、空気清浄機セットしたり、タブレット充電したりと、バダバタしてしまう。

本当は、なんか照れくさくてソワソワしてるだけ。

何を今更、なんだけど、

それはとても新鮮な気持ちに感じる。

買ってきたチキンを頬張り、

ちょっと仕事の話をする。

食後、くつろいでいると、

ふと彼の顔が近づいてきて、

でも、キスしようにも焦らされて。

首筋に彼の唇が這い出す。

彼はいつもこうして、

ゆっくりゆっくりと私の俗世間を剥いでいく。

彼は私の、こうしてほしいということを

絶妙のタイミングでしてくれる。

言わなくても、

私の体の反応で、彼が私を愛撫する。

見透かされているような、

とても不思議な感じだけれど、

そうして静かに時が流れていく。

彼が私の中に挿入ってきて、

ゆっくりと私を揺らし始める。

いたわるように、

まるで優しさだけで包み込むように。

彼は知っているだろうか。

私が愛してると呟いたこと。

自分で言葉を発した途端、

涙が溢れて。

慌てて拭ったけど、見られてしまっただろうか。

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