少し遅れてきた彼に夫を紹介する。
「高校の時の友達で、仕事でもお世話になってる〇〇君。」
「写真見せてもらったことありますよ。」
夫の反応はいい。
「写真見たんですかー。ははは」
夫がいても、彼の声に心がキュンとなる。
彼も夫もににこやかに挨拶してる。
私を挟んで左側に彼が座り、
右側に夫が座る。
この不思議な感じ、現実なんだろうか。
彼の彼女というフワフワした気持ちと、
夫の妻であるという落ち着いた気持ち。
その気持ちが始終交差し続ける。
もしかしたら、
彼との今までの情事は、私の妄想で、
本当に夢の中の出来事だったかのような不思議な感じにおおわれる。
糸がほどけて何ヶ月も前から預かっていた、
私とお揃いの彼のブレスレット。
修理して彼に渡すも、同じものを私が持っていることを夫は知ってる。
だから、袋に入れて、
「直して来ました。」と夫の前で渡す。
「ありがとうございます。」
わざわざ今日じゃなくてもと思うけど、
彼に、夫の前で渡す理由。
彼は気づいているだろうか。
夫がいても彼を想っているという、私の想い。
こうして彼と夫の初めての対面が終わった。
彼の気持ちが心配だった。
彼はどんな風に感じているのだろう。
できることなら、夫を帰し、
彼に寄り添いたかった。
そんな感情だけを置き去りにして、
夫とふたり帰路についた。
彼の知り合いになった夫。
いつかふたりで飲みに行っちゃったりするのかな。