あいたい

彼が電車を降りたとき、
確かに私は冷静だった。
他の共通の友人たちにも会いたくなった。
<みんなで会えないかな。>
そんな風に漠然と考えていた。

彼が私の仕事のことで相談にのってくれるということで、
メッセージのやり取りが続いた。
そして、飲んだ時の彼の深刻な話も気になっていた。
<どうにかできないもんかな。
物理的には無理でも、
彼の気持ちの拠り所くらいになれるかな>

 

 

再会してからわずか数日。
語らいが楽しかったのだろう。
思春期の幼い気持ちが甦ったようにも思う。
思い出しては笑みがこぼれて、
夫に何をにやけているのかと突っ込まれた。

<やばいなぁ。ちょっと楽しすぎたかな。>

いいじゃない。素敵なこと。
誰かに心を寄せるっていうのは、
日々の生活も楽しくなる。

でも、再会から3日経つ頃には想いが溢れはじめて
パニックを起こしそうになっていた。

辛かった。
心を寄せるなんてどころじゃない。

<やばい。あいたい。>

彼とのやり取りでふっと言葉に出てしまう。

「我慢すんな」
「受け止める器量くらいはあるぞ。」

そして、
彼の見え隠れしていた頼りなさとは別に、
包容力のある優しさに包まれたいと思う様になっていた。

彼の拠り所になるっていう目的を
彼と掲げたお互いのための目標を壊さないように。
それだけは忘れないように。

 

彼と再び会えることになった。
かけひきはいらない。
気持ちをぶつけるだけ。

会う前日、彼に投げかけた。

「明日、どうしたい?」

変化球は暴投するからストレートに。

彼は驚いていたようだけど、
「ゆっくりできるところに行こうか。」と
私の言葉をしっかり受け止めてくれた。

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