「久しぶり!」
待ち合わせ場所に立っている彼は、
大分私の記憶からはビジュアル的に程遠い人になっていた。
多分、街中ですれ違っても気がつけなかっと思う。
でも、「久しぶりー」と見せたあどけない笑顔と
聞きなれた低い声に懐かしさがこみ上げてきた。
その声と笑顔だけで、何年もの空白が消え去ってしまったかのようだった。
再会までの経緯も、本当に些細なことだった。
SNSで繋がった友人の先に彼がいた。
ありきたりの挨拶メッセージを送ると、
いきなり、「そのうち飲みにいこー」と返事が返ってきた。
私も、
<ま、いっかー、懐かしいし>
と軽い気持ちで約束を交わした。
そして、会うまでに何度かメッセージのやり取りをして、
お互いの現境遇をなんとなく把握していた。
彼がピックアップしてくれていたお店で軽く飲みながら、懐かしい話に花が咲く。
再会するまでの身の上話も、不思議と自然に躊躇なく、止まらない。
すらすらと勝手に言葉が発せられていく。
何年も会っていないということが信じられない程だった。
ほんの2時間くらい。
彼は私の帰宅時間を気にしてくれていた。
それでも、お店を出た後もおしゃべりはとまらず、
彼は乗換駅で乗り過ごしそうになり、慌てて
「じゃ、またね!」
と降りて行った。
止まらない会話。懐かしさ。
たったそれだけの事。
でも彼との大きな絆が生まれるのには充分すぎた。