午後の予定をこなし、
その後ミーティングのはずが中止に。
彼との約束の時間まで3時間空いてしまった。
「今日は会社でセミナーやってて外部の人の出入り多いから来ちゃいな。」
そう言われて、彼のオフィスにお邪魔した。
とは言っても、ちゃんと仕事の打ち合わせ。
本当は、軽く食事して帰る予定だった。
でも、オフィスでの打ち合わせを早めに切り上げたことで、
彼の退社時間も早まり、
時間に余裕が出来た。
「渋谷に行こうか。」
どちらともなくそんな話に。
「久しぶり大森に行こう。」
ふたりで電車に揺られて向かう。
「会社でデートだなんて常識じゃ考えられないね。」
「でも、私たち自体が常識的な仲じゃない。」
「いいんだ。2人の中では常識に変わったから。」
都合のいい常識話。
大森の「ゆっくりできる場所」。
部屋を選んでチェックインしてみたら、
初めての夜を過ごした部屋だった。
懐かしかった。
いまでも、どんな風に彼と体を合わせたのか、
はっきり思い出せる。
お互いすごく照れてたっけ。
あれからもう1年と4ヶ月経つんだね。
「久しぶり」
お互い見つめ合いながら、
湯船に体を沈めた。
彼の愛撫は相変わらず優しくて、
たくさん揺らされて、
静かに時間が過ぎてゆく。
その心地良さがとても好き。
「声、聞こえない?」
テレビの音を消すと
隣の声が筒抜けだった。
「AVじゃない、ホントの生の声聞くの初めて。凄いね。」
若い女性の悲鳴に近い声。
特に刺激を受けた訳では無いけど、
彼自身を少しの間、癒してた。
「いったみたいだね。静かになった。」
ふたりでシャワーを浴びて身支度をする。
帰り道、とても穏やかな気持ち。
今度はいつ会えるかな。
私からは会いたいって言わないように我慢してたんだよって彼にうちあけた。
忘れられてるのがわかると辛くなる。
だから私もわざと知らんぷり。
でも、ちゃんとそれを打ち明けて、
お互いわだかまりは残らない。
心地好い風に当たりながら、
気だるさをただ味わいながら、
それぞれの帰る場所に帰った。