彼女の旦那と

あるグループでの忘年会。
そのグループには、彼女の旦那もいる。

彼女と旦那はならんですわって、その隣に別の女性。
その隣に俺。

彼女の歌や、歌に合わせて踊る姿を横目に捉えながら過ごす数時間。

踊りながら可愛く振るお尻をさわれないのがもどかしい。

隣に座って肩を抱いたり手をつなげないのがもどかしい。

せめて歌は彼女のために歌う。

チラチラと見を合わせるのを旦那に気づかれないか?

他の仲間たちに気づかれないかと、まわりの視線も気にする。

旦那さんは俺のことを気にするでもなく、一度も目が会うことはなかった。

隣に座って何かを話し合う夫婦としての彼女を見ても、特に何かを感じることもなかった。

今日はハグもキスも、手をつなぐことさえ、最初から諦めていた。

でも、帰る時には、俺が送っていくことができないもどかしさ。

せめて、目の前を通り過ぎる彼女の腰にそっと触れる。

彼女はそれを気づいていると、そんか気がその時した。

むしろ、今夜のお別れをするために、少しでも距離を縮めるために、俺の目の前を通ったのだろう。

いじらしい。

抱きしめてあげたい。

もどかしい。

また会う約束などすることもなく。

それじゃまたなと別れる時の、

お前がいい。

そんな中村雅俊の歌のような、もどかしくも、ゆったりと落ち着いた気持ちになれた年の瀬だった。

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