彼が私の服をまくり上げて
素肌に唇を落としながら、
私の心の鎧を溶かしていく。
一枚一枚丁寧に洋服を剥ぎ取っていく。
彼の触れるか触れないかの指先を
体全身で感じる。
私が鎧から開け放たれると
彼は私の中に挿入ってきた。
彼が私の一部になる。
彼に揺らされて、
次第に私は彼に飲み込まれていく。
一緒にお風呂に入り、
幾度となく肌を合わせた。
彼の肌と私の肌が吸い付くような感触が好き。
彼は私を満足させて、
うっとりするような感覚にさせる。
彼は、彼はどうなんだろう。
彼は私を悦ばせるばかりで、
彼は彼自身は悦んでくれているのだろうか。
彼との時間はあっという間に過ぎてしまう。
慌ただしく身支度をして、
「寂しくならないでね。」
彼は優しく微笑んで、キスをしてくれた。
そう言って、彼は終電で帰って行った。
高層階のホテルの窓から彼を見送る。
彼らしき人が手を振っているのが見える。
楽しかった。
彼の笑顔が優しくて、
彼の声が胸の中に響く。
目標に向かって歩いて行く。
夢ではなく現実の世界で見る将来。
「ありがとう」
手を振る彼に呼びかけた。
この後は、ひとりホテルを堪能しよう。