ただ見つめていたい

欲しい、という気持ちが、失いたくない、に変わるから苦しくなる。
好きになり、彼を求めすぎ、苦しくなり、それをやり過ごすために深い闇に落ちた。

そこで見たものはドロドロとした、真実か嘘かわからない世界。
自分を闇の世界に落とし込み、
私は壊れていった。
彼をその闇の世界へ引きずり込み、
繊細な彼はもがき苦しんだ。
感じる必要のない感情にそれぞれがのみこまれ、
自分の気持ちがわからなくなっていく。

好きだけど会いたくない。
好きだけど見たくない。
楽しみはなく、ただ失いたくないと苦しんだ。

苦しくて、悲しくて。
失いたくなくて。
彼をただ心で感じるために、
耳を閉ざし、視野を狭くし、
彼に覚えた感情をひたすら噛み締めた。

時々、なんとなく言葉を交わす。
そこには心配も不安もなかった。
距離をおいても、彼と繋がっていることに安堵を覚えた。
いつしか辛い気持ちも、苦しいという感情も無くなっていた。
彼と楽しく言葉を交わす、
彼のことを考えると心が明るくなる。

失いたくないという思いが、
一緒にいたいという思いに戻れた時、
心がふわりと軽くなった。

再会した時のように、
ドキドキやワクワクを思い出す。
楽しい夢を見るためには、
闇の世界は必要なかった。

彼をいつまでも見つめていよう。
失いたくないのではない。
彼をただ見つめていたいだけ。
楽しく夢を見続けるために。

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