よばい星

夜這星は流れ星。

流れ星は、恋い慕う結果、魂だけ抜け出して好きな人のところへ会いに行く姿にも例えられていたそう。

跡形なく、彼のいた形跡を片付けた。

なのに。

彼がいた場所に、彼の残り香が残ってる。

玄関や、

リビング、

ダイニング、

お風呂、

洗面所、

タバコを吸ったキッチン、

布団からも。

私の記憶の中の彼のにおいだけは消せなかった。

彼が帰ったあと、私も少し眠って一人で出かけた。

外の空気を沢山吸って、

帰宅したときはもう彼のにおいを感じなかった。

きっと夢のひと時だった。

土曜日から夫が出張に行くことになった。

「夜のドライブにでも行く?」

彼が誘ってくれた。

仕事が終わってから彼が車で来てくれた。

夕飯食べて、

お風呂入って、

リビングに敷いた客布団へ。

そこでどのくらい過ごしただろう。

気がついたら裸のまま眠りについていた。

3時に目が覚めて、

服を着てドライブに出かけた。

彼は日が出る前に帰った。

今はとても不思議な気持ち。

ここに彼が来てたなんて。

彼と愛しあったなんて。

家の中を見渡すと

彼の残像が見える。

あと少しだけ思い出してニタついて。

夫が帰宅したら、

また夫との変わらぬ生活。

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