彼女の住む街

平日。

彼女のオフの日に、仕事休みをいれてみた。

午前中と夕方から予定があるので、彼女の住む街まででかけてランチデートでもするかなと思いラインをする。

「明日の午前と夕方の予定はどことどこ?」

しばらく既読がつかない。

ふと、こんなことを聞くと、

「あした仕事休む気かな?」
「デートするなら夕方の用事をキャンセルしちゃおうかな?」

そんなことになるような気がして、未読のメッセージを「送信取り消し」した。
なにを取り消ししたのか気になるようだが話をごまかして教えない。

しかし、しばらくして「午前は○○、午後は○○」と返事が帰ってきた。

読んでたんじゃん。

案の定、午前の用事の場所あたりで、デイユースの話題になる。

でも、午後の予定をちゃんとこなすように、ランチだけの約束にした。

会うたびに彼女の予定をこわしてしまうと、これから誘いにくくなるから、予定はそのままで、空いてる時間だけデートする。

当日は、会社とは逆方面の電車に乗って、朝から彼女の住む街へ向かった。

しばらく電車を乗り継ぎ、いつもの彼女の帰りの道のりを体感する。

けっこう大変な思いをして、あいにきてくれてるんだな。

彼女の用事のある駅のカフェで彼女を待つ。

カウンターから外が見える席で、いつも彼女が行き来しているであろう駅の景色に、彼女をかさねて想像する。

初めてきた景色、しらない景色。
普段の生活をする彼女は、おそらく普通に見慣れた景色。

ゆめと現実の境目。

ほどなく彼女が現れる。

彼女にしたら、現実の街にいる、夢の中の存在の俺。

彼女もゆめと現実の境目を感じたようだ。

カフェで、どこに行こうかと相談。

駅前にある「インターネットカフェ」で過ごすことに。

カラオケもできるフラットな部屋を選択して、映画をみたり、ゴロゴロしたり、いちゃいちゃしたり。

平日やすみの贅沢な時間。こういうのもなかなかいいな。

そして、夕方の用事のある場所まで、路線バスの旅。

のどかな、みたことのない景色の中を、いつもこの景色の中にいる彼女と、いっしょに1時間ほどゆられる。

きっと、俺のみている景色とは違う景色を、彼女は感じているのだろう。

ゆめと現実の境目。

彼女は、用事のある場所のバス停で降りる。
おれは、そのまま、その先の駅までバスに残る。

バスの中で手を振る。

振り返ると、バスを見送る彼女がみえる。

日常のバスの景色。

その景色に普段はいないはずの、俺が乗っているバス。

これから、彼女は、ここで普段を普段としてすごす。

その景色に俺が入ってしまってよかったのか。

きっと、あの時はあのバスに俺が乗っていた。

そんなことを考えてしまうのではないかなって。

寂しくなりませんように。

ちょっと自意識過剰かな?

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